掲載情報更新日:2023年5月9日
目次
Part.1 体内での薬の働きと、相互作用への「酵素」の関わり
Part.2 グレープフルーツと医薬品に相互作用が生じ得る原因
Part.3 グレープフルーツと相互作用を起こし得る医薬品、起こさない医薬品
Part.2グレープフルーツと医薬品に相互作用が生じ得る原因
人体側の「薬物代謝酵素」に対し、グレープフルーツ側では、果実や果皮などに含まれる「フラノクマリン類」とよばれる一連の物質が、相互作用を引き起こし得ることが明らかになっています。
グレープフルーツには、果肉が白色のものやピンク色のもの、赤色のものなど様々な品種があります。
「フラノクマリン類」のグレープフルーツ品種ごとの含有量は、「ホワイト種がピンク種やルビー種よりも多い傾向」が報告されています。ただし、例えば市販のジュース間では「フラノクマリン類」の含有量は10倍以上異なることが知られていますので、品種とフラノクマリンの含有量が必ずしも一致するわけではありません。
また「フラノクマリン類」は、外果皮>果肉>種子の順に多く含まれていることから、果皮を使用したマーマレードなどでも、摂取量によっては相互作用が懸念されます。
「フラノクマリン類」は、「小腸」に取り込まれると、そこに存在する薬物代謝酵素「CYP3A4」に結合して、その働き(代謝活性)を止めてしまいます。このことを「薬物代謝酵素の阻害」といいます。一部の薬物は、小腸で吸収されるときに、小腸に存在する「CYP3A4」によって一部が代謝(分解)されるため、全身に移行する薬物の割合が低く抑えられます。
このように、薬物を服用した際「フラノクマリン類」によって「CYP3A4」の代謝活性が阻害されると、全身に移行する薬物の量が薬の開発時に想定した量より多くなってしまいます。その結果、「薬の効果が出すぎる」状況が生じたり、「出ないはずの薬の副作用が出てしまう」ことが起こりえるのです。
このページのポイント
- グレープフルーツの果実や果皮などに含まれる「フラノクマリン類」という物質が、医薬品との相互作用を引き起こし得ることが明らかになっている。
- 「フラノクマリン類」の含有量は、「ホワイト種がピンク種やルビー種よりも多い傾向」が報告されているが、品種とフラノクマリンの含有量は必ずしも一致しない。
- 「フラノクマリン類」は、外果皮>果肉>種子の順に多く含まれており、果肉やジュース類だけではなく果皮を使用したマーマレードなどでも、摂取量によっては医薬品との相互作用が懸念される。
- 「フラノクマリン類」によって「CYP3A4」の代謝活性の阻害(適切に代謝されない)が生じると、全身に移行する薬物の量が医薬品の開発時に想定した量より多くなり、その結果、「薬の効果が出すぎ」たり、「出ないはずの薬の副作用が出る」ことが起こりえる。
[※ご注意]グレープフルーツと医薬品が起こし得る「相互作用による健康への影響」は、年齢や体質・体調など患者一人一人で異なります。自身で判断せずに診察や服薬指導の際に医師や薬剤師に確認して下さい。
■参考文献
- 杉山正康(著, 編集). 新版 薬の相互作用としくみ. 日経BP, 2022;第2版, 820p.
- 森本雍憲(監訳). 医薬品-食品相互作用ハンドブック. 丸善出版, 2011;第2版, 584p.
- 堀美智子(監修, 編集). 医薬品・食品相互作用ハンドブック. じほう, 2006, 309p.
- 大谷壽一(著). マンガでわかる薬物動態学. オーム社, 2021, 181p
- 「健康食品」の安全性・有効性情報. “グレープフルーツと薬物の相互作用について (Ver.20090129)”. 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所.(参照2022-10-01).
- 一般社団法人日本医療薬学会 お知らせ. “「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」の公表”. 一般社団法人日本医療薬学会 医療薬学学術第一小委員会.(参照2022-10-01).
- ※コンテンツは、医師・薬剤師による監修を経て公開されています。
- ※コンテンツに記載されている医薬品は、一般に「経口投与(口から飲む)の処方薬」を指します。