掲載情報更新日:2023年5月9日
目次
Part.1 体内での薬の働きと、相互作用への「酵素」の関わり
Part.2 グレープフルーツと医薬品に相互作用が生じ得る原因
Part.3 グレープフルーツと相互作用を起こし得る医薬品、起こさない医薬品
Part.5 「QoL」を考え、薬剤師や医師へ悩みや希望を伝えよう
Part.5「QoL」を考え、薬剤師や医師へ悩みや希望を伝えよう
以前は、「病気を治したいなら薬を正しく飲むのがあたり前…」「薬をきちんと服用しない患者は問題だ…」などという考え方が一般的でした。
しかし近年では、「自分らしく生きるために必要な治療の一環と理解し、納得して薬を服用頂く」という考え方が、医療職種の間でも主流となっています。
自分らしく生きるための「生活の質」のことを、医療の世界では「QoL(キューオーエル):Quality of Life」といいます。
QoLには、「生活習慣」など患者本人が大切と考える様々な事柄が含まれますが、中でも「食習慣」は重要な要素です。
薬剤師や医師にとっても、治療を優先するあまり「QoL」を軽視した指導をした場合、かえって患者が薬を服用しなくなる恐れがあるため、患者が納得の上で服用を継続頂く(この考え方を「アドヒアランス」といいます)ことが、薬物による治療効果を維持するための大切なポイントだとの理解が浸透してきています。
グレープフルーツを例に取れば、今までグレープフルーツが好きで食べていたのに薬のせいで全てやめてしまう…、つまり食習慣を変えてしまうのは、やはりQoLを損ね、生活の質を落とすことにつながると思います。
さらに問題なのは、「飲食できる可能性があるにも関わらず、最初からあきらめてしまう」ことではないでしょうか。
テレビ・雑誌などのマスメディアや口コミなどでは、得てして誇大な表現で〝食べてはダメ〟が強調されがちですが、一般に流布された情報をそのまま鵜呑みにすることなく、薬剤師や医師に相談しながら「グレープフルーツとの相互作用を正しく理解し対応する」ことが大切なのです。
服用した薬物が体の中でどの程度の効果を発揮し、また相互作用が起きるか否かは、様々な要因が関係し、患者一人一人で異なります。
では、「難しくて解かりにくい相互作用を正しく理解し、適切に対応する」にはどうすれば良いのでしょうか。
そんな悩みやお困りごとは、どうぞ気軽に薬剤師や医師に相談してみて下さい。もし、グレープフルーツの飲食を続けたいと思ったら、遠慮せずにその思いを薬剤師や医師に伝えることです。
「飲みなれた薬を変えても構わないのでグレープフルーツを飲食したい。どうすれば良いですか?」など、「患者側の願いや想いの強さ」が伝わるよう訴え、希望を叶えるために医師や薬剤師に動いて頂くよう努力してみてください。
「薬剤師は薬のプロフェッショナル」です。
今は、いくつもの法令が変わったり新たに作られたりして、薬剤師には「患者が薬を飲んだ後のフォロー」が義務付けられています。
もし、患者の希望が通り、グレープフルーツの飲食を再開したり、服用薬を変更した場合でも、薬剤師は積極的に関わりを持ち、定期的な体調管理など安全・安心に薬物治療が続けられるよう適切にフォローしてくれることでしょう。
このページのポイント
- 近年では、患者が自身に必要な治療の一環であると納得して薬を服用する「アドヒアランス」という考え方が、医療職種の間で主流となっている。
- 自分らしく生きるための「生活の質」のことを、医療の世界では「QoL(キューオーエル):Quality of Life」という。
- マスメディアなどでは、誇大な表現で〝食べてはダメ〟が強調されがちだが、流布された情報を鵜呑みにせず、「グレープフルーツと医薬品との相互作用を正しく理解し対応する」ことが重要だといえる。
- 「飲みなれた薬を変えても構わないのでグレープフルーツを飲食したい。どうすれば良いか?」など、「患者側の願いや想いの強さ」が伝わるよう訴え、希望を叶えるために医師や薬剤師に動いて頂くよう努力することが大切である。
[※ご注意]グレープフルーツと医薬品が起こし得る「相互作用による健康への影響」は、年齢や体質・体調など患者一人一人で異なります。自身で判断せずに診察や服薬指導の際に医師や薬剤師に確認して下さい。
■参考文献
- 杉山正康(著, 編集). 新版 薬の相互作用としくみ. 日経BP, 2022;第2版, 820p.
- 大谷壽一(著). マンガでわかる薬物動態学. オーム社, 2021, 181p
- 後藤惠子(編集), 有田悦子(編集), 井手口直子(編集). 薬学生・薬剤師のためのヒューマニズム. 羊土社;改訂版, 2019, 276p
- 日本ファーマシューティカルコミュニケーション学会(監修), 後藤惠子(編集), 井手口直子(編集). ファーマシューティカルケアのための医療コミュニケーション. 南山堂, 2014, 286p.
- 赤羽根秀宜(著). 薬局・薬剤師のためのトラブル相談Q&A47. じほう, 2014, 184p
- 狭間研至(著). 薬局マネジメント3.0. 評言社, 2015, 222p
- 「健康食品」の安全性・有効性情報. “グレープフルーツと薬物の相互作用について (Ver.20090129)”. 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所.(参照2022-10-01).
- 一般社団法人日本医療薬学会 お知らせ. “「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」の公表”. 一般社団法人日本医療薬学会 医療薬学学術第一小委員会.(参照2022-10-01).
- ※コンテンツは、医師・薬剤師による監修を経て公開されています。
- ※コンテンツに記載されている医薬品は、一般に「経口投与(口から飲む)の処方薬」を指します。